借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山は、黄色いツナギを着たヒゲ面の男に助けられる。その男は蒼山に「居場所」を用意してやるという。蒼山のことを“デュード”と呼ぶその男に誘われ辿り着いた先は、ある奇妙な「町」だった。
「町」の住人はツナギを着た“チューター”たちに管理され、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証される。それどころか「町」の社交場であるプールで繋がった者同士でセックスの快楽を貪ることも出来る。
ネットへの書き込み、別人を装っての選挙投票……。何のために? 誰のために? 住民たちは何も知らされず、何も深く考えずにそれらの労働を受け入れ、奇妙な「町」での時間は過ぎていく。
ある日、蒼山は新しい住人・紅子と出会う。彼女は行方不明になった妹をこの町に探しに来たのだという。ほかの住人達とは異なり思い詰めた様子の彼女を蒼山は気にかけるが……。
『変わった映画』に見えるとしたら、
たぶん僕たちのほうがそうとう『変』なのだ。
あきらかに不条理な世界を作り出した、
その独創性。
謎めいて、魅力的な作品。
優れた現代社会批評にして、
予見性に満ちた問題作。
しかも、滅法面白くてエロティック。
脚本上の欠陥にも拘らず、
この新人監督の撮る聡明なショットには、
見るべきものがあると断言したい。